咳 (せき)が止まらない・長引く咳の原因、診断、治療

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先日、**第48回草加薬物療法研究会」にて、地域の薬剤師の皆さまを対象に「慢性咳嗽(まんせいがいそう) 診断と治療の現在地:ガイドラインに基づくアプローチ」**というテーマで講演を行いました 。
「咳が長引いて止まらない」という悩みは、日常生活に大きな支障をきたします 。今回の講演でお話しした、長引く咳の最新の考え方についてポイントを共有いたします。

咳は「8週間」がひとつの目安

咳はその期間によって、以下のように分類されます。

急性咳嗽(3週未満):主に感染症が原因です 。
遷延性(せんえんせい)咳嗽(3〜8週未満):感染後の咳などが疑われる移行期間です 。
慢性咳嗽(8週以上):原因を特定するための精密検査が必須となります 。

日本国内には、20歳以上の推計で約300万人もの慢性咳嗽の患者さんがいるとされており、その多くが仕事の効率低下や睡眠不足、会話の困難などに悩まされています 。

慢性咳嗽の主な原因と治療

慢性咳嗽の原因は一つとは限りません。調査では、約38%の患者さんに複数の原因が重なっていることが示されています 。

咳喘息(CVA)

夜間から早朝に咳が悪化するのが特徴です。吸入ステロイド薬による「抗炎症治療」が基本となります 。

胃食道逆流症(GERD)

食後や会話で咳が出やすく、胸やけを伴わないケース(Silent GERD)もあります 。

副鼻腔気管支症候群(SBS)

鼻水や痰が絡む感じが特徴で、マクロライド系抗菌薬の少量長期投与などが検討されます 。

アトピー咳嗽

喉のイガイガ感が強く、抗ヒスタミン薬が効果的です 。

新しい概念「咳過敏症症候群(CHS)」

これまでは「原因疾患さえ治れば咳は止まる」と考えられてきました 。しかし、原因への治療を行っても咳が残る**「難治性慢性咳嗽」が存在します 。 これは、咳の神経そのものが過敏になり、冷気や会話、香りといった僅かな刺激でも激しい咳が誘発される「咳過敏症症候群(CHS)」**という状態です 。

最新のガイドライン(2025年版)では、こうした難治性の咳に対して、神経の過敏性を抑える**P2X3受容体拮抗薬(ゲーファピキサント)**の使用が新たな選択肢として示されています 。

当院の診療アプローチ

当院では、以下の3ステップを重視して診療を行っています。

詳細な問診(最重要):いつ、どんな時に咳が出るかを詳しく伺います。WEB問診を活用し、効率的かつ漏れのないヒアリングを心がけています 。
必要な検査:胸部レントゲン、血液検査、呼気NO検査、呼吸機能検査、胸部CTなどを適宜実施します。
診断的治療:検査で何も異常がない場合には問診から推測される原因に対して治療を開始し、その反応を見て診断を確定させていきます。

長引く咳は「いつか治る」と我慢せず、早期に専門医へ相談することがQOL(生活の質)の維持に不可欠です。また、お薬の飲み合わせや副作用(味覚の変化など)、吸入手技の確認など、薬剤師の方々と密に連携し、地域全体で患者さんの「止まらない咳」をサポートしてまいります 。

「この咳、いつまで続くんだろう…」と不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献

今回の講演および本記事の作成にあたり、以下の文献を参考にしました。

  1. 日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版作成委員会 編:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025. メディカルレビュー社, 2025.
  2. Tobe K, et al.: Epidemiology of chronic cough in Japan: a nationwide web-based survey. BMJ Open Resp Res 2021; 8(1): e000832.
  3. Fujimura M.: Frequency of persistent cough and its effects on quality of life in Japanese general population. Allergology International. 2012; 61(4): 573-81.
  4. Kanemitsu Y, et al.: Clinical features and management of intractable chronic cough. Allergol Int. 2019; 68(4): 478-85.
  5. 新実彰男:主な呼吸器用薬剤の作用機序と適応: 咳嗽治療薬. 弦間昭彦, 他 編:呼吸器疾患最新の治療2025-2026. 南江堂, 2025.
  6. McGarvey LP, et al.: Gefapixant, a P2X3 receptor antagonist, for the treatment of refractory or unexplained chronic cough: results from two phase 3 randomised, double-blind, placebo-controlled trials (COUGH-1 and COUGH-2). Lancet. 2022; 399(10328): 909-23.
この記事を書いた人
草加きたやクリニック

院長 星加義人

経歴
埼玉医科大学医学部卒業
順天堂大学大学院医学研究科博士課程 修了
順天堂大学医学部附属静岡病院勤務
東京厚生年金病院(現・独立行政法人地域医療機能推進機能 東京新宿メディカルセンター)内科勤務
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器内科勤務
越谷市立病院呼吸器科 医長就任
2016年6月「草加きたやクリニック」院長

資格・所属
医学博士
日本内科学会 認定内科医
日本呼吸器学会 専門医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本プライマリ・ケア連合学会
日本アレルギー学会
日本旅行医学会
身体障害者福祉法指定医(呼吸機能障害)
難病指定医
日本禁煙学会

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