【百日咳が流行しています!~埼玉県の感染状況と対策~】

百日咳 ブログ

みなさま、こんにちは。草加市で呼吸器内科を専門としている草加きたやクリニックから、現在流行している「百日咳(ひゃくにちせき)」についてお伝えいたします。

埼玉県内の百日咳の流行状況

国立健康危機管理研究機構の報告によると、2025年7月6日までの1週間で全国の百日咳の感染報告数が3578人と過去最多を記録しました。埼玉県は254人で全国第2位となり、東京(277人)に次ぐ高い数値となっています。特に感染者が200人を超えたのは、全国でこの2都県のみです。

 

百日咳とはどのような病気?

百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる急性気道感染症です。特にけいれん性の咳発作(痙咳発作)が特徴的で、感染後の症状経過は以下の3段階に分けられます。

1. カタル期(約2週間)

風邪症状に似た鼻水・軽い咳・微熱などが徐々に現れ、咳が次第に激しくなります。

2. 痙咳期(約2~3週間)

短い咳が連続して起こり、その後に「ヒュー」という吸気音が出る特徴的な発作がみられます(レプリーゼ)。激しい咳のため嘔吐することもあり、顔面の点状出血や結膜出血、鼻出血が起こることもあります。特に乳児では典型的な咳がないことも多く、無呼吸やけいれんを起こすこともあり注意が必要です。

3. 回復期(約2~3週間以上)

徐々に咳発作が減少しますが、咳が完全になくなるまでには長期間を要することがあります。

大人の百日咳にも注意

大人では、典型的な症状がないことも多いため、診断が見逃されやすくなっています。ただし、菌の排出は続いているため、ワクチン未接種の乳児や新生児への感染源となる可能性があります。

当院では、長引く咳の患者さんが多く来院されます。咳喘息など感染症以外のケースも多いのですが、最近は10歳代を中心に百日咳の患者さんが増えてきています。

診断方法について

当院では、以下の診断方法を取り入れています。

  • PCR検査(ぬぐい液):咳の発症後1~3週間以内で高感度の診断が可能です。
  • 血清学的検査(血液検査での抗体価測定):百日咳毒素に対するIgG・IgA抗体価の測定ができます。発症からある程度の時間の経過しないと数値が上がりません。

治療について

百日咳の治療には、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシンなど)が使用されます。特に早期のカタル期に服用すると効果的で、菌の排出を短期間で抑えることができます。咳の症状が強い場合は、鎮咳剤などの対症療法を併用します。

予防と対策

感染予防には、手洗いや手指消毒、「咳エチケット」としてマスクの着用が有効です。また、有効な予防策として百日咳ワクチン(DPT-IPV-Hibなど)があり、特に乳幼児に対する定期予防接種が重要です。日本では子供の頃に百日咳のワクチンを接種していますが、その効果は時間とともに徐々に弱くなります。そのため、大人になってからも百日咳にかかるリスクがあります。ワクチンの免疫効果は時間の経過とともに減衰するため、年齢や状況に応じた対応も検討されます。

 

当院の最新検査機器について

当院では、ビオメリュー社製の最新検査機器「BioFire SpotFire®パネル」を導入しています。この検査は高精度なMultiplex-Nested PCR法を用いており、百日咳だけでなく、新型コロナウイルスやインフルエンザ、マイコプラズマ、RSウイルスなど15種類の呼吸器感染症を同時に約20分という短時間で診断可能です。

 

参照:埼玉県庁感染症発生動向調査 2025年、厚生労働省「百日咳とは」